和弓の遠距離弓射とアーチェリーの発射角について

アーチェリー競技において、アーチェリー70mの的を、弓道の近的の星を射抜くように、小さなターゲットに中てていく様をご覧になったことがある方も多いと思います。それは、アーチェリーのアーチャーの熟練の射術はもちろん前提にある上で、物理の法則にしたがい自由落下運動をする矢は、放物線を描くようにして的に中り、その水平方向の等速運動、垂直方向の重力の加速度を、数学・物理学に基づいて的確に的の中心に中てる為に、矢の発射する角度、サイト(照準器)の照準角が緻密に計算され、最適な角度で発射できるようにサイト(照準器)等の弓具が設置され、セットアップされています。


そもそも五射六科で説明しましたように、日本の弓道の歴史において、遠距離弓射は、五射の「指矢前」、「遠矢前」にて発達してきました。


「指矢前」は、もともと遠くにいる敵に対し、多くの矢を射てけん制攻撃する射法で、日置流では数矢前とも言われます。「遠矢前」は、敵に包囲されたときに、遠くにいる味方に矢文を届ける為、という目的で発達した射法になります。どちらも、アーチェリーのように遠くの的をできるだけ中心を狙って射る、という目的で生まれたものではないこともあり、射法や弓具について、単純なアーチェリーとの比較ができません。弓道のルールでは、当然和弓には照準器をつけることが認められておりません。


また、指矢前は、江戸時代に堂射が生まれ、遠距離射法として似た性質がある為同義とされる場合がある一方で、堂射で射法・弓具の独特の発展がありました。天井の弾道制限下で、120mの廊下の端から端まで矢を通す、という低く真っ直ぐに長距離を飛ばす、ということで、従来の弓具から、弓、矢、ゆがけ(堅帽子のゆがけ)に至るまで、現代の弓具までつながる、非常に重要な弓具の研究・改良がなされました。


同じ遠的のとらえ方でも、洋の東西で目的・射法・弓具の成り立ちの違いがあり、弓道のルーツをたどり、西洋の弓射や弓具との違いや、同じポイントを学ぶことで、弓道や弓具について、よりよく理解できる一端となることもあるかと思います。
下記のアーチェリーサイトに、アーチェリーの発射角の詳しい説明が記載されておりますので、ご関心ある方はご参照下さい。

アーチェリーの発射角について

https://www.a-rchery.com/arrow04.htm

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