世界初グラスファイバーFRP製の和弓の誕生

前述した様々な弓具研究を経て、90mの遠距離弓射においても鋭い矢勢と高い的中精度を併せ持つ性能の和弓を実現する為、また常に安定した状態を保ち雨天にも強い、という性質を同時に和弓にもたせる為、既にアーチェリーの弓で使用されていたグラスファイバーFRPに着目し、これを使用した和弓開発に取り組みました。

FRPとは、「Fiber Reinforced Plastics、繊維で強化されたプラスチック素材」の略語のことです。グラスファイバー繊維等が入ったプラスチックは、素材そのものの強度・弾性が高められた素材で、航空機、車両、建築材、釣り竿やスキー板等に幅広く利用されている、現代社会には無くてはならない必需の素材です。

ひとくちにFRPといっても、様々な素材がある為、複数の種類のFRPを購入し、World Archery Championshps1967の本大会まで時間的な制約がある中、ベースは竹弓を土台とすることにしました。竹弓の内竹・外竹部分を削り、内竹外竹部分にグラスファイバーFRPを貼り付け、試行錯誤の研究開発を進めました。結果として、縦方向にグラスファイバー繊維で強化されたロービングのグラスファイバーFRPが最も適していると判断し、それを使用したWorld Archery Championships用のグラスファイバーFRPの和弓を、複数製作しました。

従来の竹弓の内竹・外竹をグラスファイバーFRPに変えた和弓は、大幅に矢勢が良くなっただけではなく、的の中心に向かう的中する性能まで、大きな改善がありました。宮田純治が的中をコントロールできる理想としての20㎏台前半の弓力で、90mの的でも的に届き、かつ的中精度が大幅に向上しました。これらの鋭い矢勢と的中が向上する性能は、もちろん30mの距離でも同様に発揮される為、全ての距離において、グラスファイバーFRPの弓を使用する事に決めました。

矢は、鳥の羽をアーチェリーのプラスチック製の矢羽根に変えた、イーストン製のジュラルミンシャフトの矢を製作しました。

弦は当時は弓道用で市販されている一般的な弦は麻弦であり、合成繊維の弦は、アーチェリー用のナイロン/ダクロン繊維の原糸を基に弓道用のものを自作しました。現在存在する硬質の化学繊維の弦では無く、柔らかいが耐久性の高い合成繊維の弦を作り、本大会にも麻弦と併用しました。

こうして、今では当たり前のように弓道場で使われているグラスファイバー弓、ジュラルミン矢の弓道具が、ここに誕生しました。

以下は、自作のグラスファイバーFRP製の和弓、プラスチック製の矢羽根をつけたジュラルミン矢でWorld Archery Championships 1967に向けた、野外遠的射場で練習する当時の宮田純治。

※浦上道場の日置流印西派の射法において、通常は会の頬付けは頬骨・鼻の下の位置ですが、70-90mの遠的練習の為、口割の位置まで下げています。