World Archery Championships 1967に向けた弓具研究① 総括

World Archery Championships 1967の前年に開催された遠的強化合宿で行われた遠的競射会(アーチェリールール)において、宮田純治は和弓部門第1位、アーチェリー混合部門でも第4位という成績を収めました。

その前に、「遠的における和弓弓具の研究の一端として」として、この時点での宮田純治の独自の弓具研究結果をレポートとしてまとめました。ありとあらゆる種類の弓道具を実際に使用し、どの弓具がどのような特性を持つかをまとめ、World Archery Championships 1967に使用する為の弓具としての適性判断の参考とする為、全日本弓道連盟及び合宿参加メンバーに共有しました。

<使用弓具>

 (当時は竹弓のみ)

・数量:40張

・弓長:並寸(7尺3寸)~7寸詰(6尺6寸)まで

・弓力:18㎏~31㎏まで

・竹矢(一文字、麦粒、竹林[堂射用の矢]:曽根正康作)

・ジュラルミン矢(シャフト:イーストン製)

ゆがけ

・堅帽子

・柔帽子

・麻弦

・化学繊維の弦

矢については、アーチェリーで、現在ほど多様な種類は無いものの、イーストン製のジュラルミン矢が既に存在している時代でした。宮田純治が弓道用の長さに切り、フレッチャーと呼ばれるアーチェリーの羽をとりつける機器で自作もしましたが、矢師の曽根正康先生が全面的に協力してくださり、様々な遠的用の竹矢、ジュラルミン矢を製作してくださいました。

これらの堂射でも使われた伝統の遠距離弓射用の弓具をふくめ、様々な弓道用の弓具を実際にアーチェリーの70m、90mの遠的にて使用した結果、大きな課題に直面します。

それは、大きく以下の3つになります。

①矢飛びと命中の相反関係

②耐久性・耐候性

③均一性

①については、弓は矢飛びをよくしようとすれば強弓ほど飛びますが反面中りが悪くなり、矢も遠距離弓射用の竹林矢はよく飛ぶが中りが悪くなる、といった相反関係がありました。60mでは近的を中てるように矢所を集めていた宮田純治でも、屋外で行われ強風や雨天の場合もある70m、90mのアーチェリー競技においては、全く別物の難易度であることが、実際に様々な弓具を試すことで判明しました。90mにおいて、30㎏以上の強弓を使えば矢勢よく的まで届いても矢所は集まらない、といった相反の問題に直面しました。90m先の12㎝の的の中心を狙う的中競争においても、23㎏-25㎏の弓が、的の中心への的中を目的とした制御可能な最適弓力範囲、と宮田純治は判断していました。しかしながら、その弓力は竹弓のままでは90mの距離を飛ばすには矢勢が足りず、この自身が的中を制御できる弓力のまま、矢勢を更に良くする課題を解決しなければなりませんでした。これが、グラスファイバーFRPを使用するに至った大きな要因の一つになりました。

②アーチェリーは、雨天や強風が吹いていても野外で実施されますが、天下泰平の江戸時代で、弓道場等の屋内で進化した現代までに通じる弓道の弓具は、竹と木で製作された竹弓(ほとんどは対候性を高めた塗弓ではない白木の竹弓)、竹製の矢、鹿革のゆがけと全て自然のものであり、湿度で性能・性質が大きく変化し、雨天でぬれた場合には、竹矢や堅帽子のゆがけは、ほとんど使えない状態になってしまうことに、あらためて気づかされました。アーチェリーで実用化されていたグラスファイバーFRPの弓、ジュラルミン矢は、この対候性・耐久性の観点からも、非常に優れていました。

③竹弓、竹矢は全く優れた性能を持つ伝統の弓具ですが、自然のものから製作している為、竹矢も優れた2本の竹矢が、90mの的中競争で微妙な個体の差異が、どうしてもでてしまいます。多数の矢数をかけなければいけない的中競争で、イーストンのジュラルミン矢の均一性と比較すると、どうしても1本1本の個体差がでてしまい、同じようにひけたときにも矢所の集まりに変化がでてしまいます。

アーチェリーでは、弓具の近代化が既にかなり進んでおり、グラスファイバーFRP製の弓、合成繊維の弦、サイト・スタビライザー・クリッカーが装備され、上記の矢飛びと的中、耐久性・対候性、均一性の観点からも、非常に優れた弓具が開発され実用化されていました。これらの弓具を用いた世界レベルのアーチェリー選手の高い的中に対抗するため、宮田純治は、竹弓の内竹と外竹部分を削り、グラスファイバーFRPを張り付けて製作したプロトタイプのグラスファイバーFRP製の和弓を自作し、そのほかにも発射角を一定にする為のサイトを自作して、大会への準備を試行錯誤して進めました。